東京の大学の入学が決まり、住居を探していましたがやっと気に入った物件が決まりました。不動産会社に申込書を提出し、契約日を決め田舎に帰ったところ、審査で落ち契約ができないとの連絡を受けました。申込書提出時に媒介業者は、問題はないと言っていました。賃貸借契約は諾成契約ですから契約は成立しているのではないですか。
確かに、契約は当事者双方の合意により成立し、契約書が締結されたことが契約成立の要件とはなっていません。しかし、実務上は、後日のトラブルを防ぐために、原則、契約書の締結が行われたことをもって「契約が成立した」と取り扱われています。
アパートの賃貸契約を締結しようとしたところ、契約書の中に「賠償責任保険に加入しなければならない」と記載されており、加入が義務付けされています。この場合は保険に加入しなければならないでしょうか。また、加入するとして、給与天引きで割引できる勤務先の保険に入りたいのですが、媒介業者の勧める保険でなくてはならないのでしょうか。
契約書で借家人賠償保険などの加入が義務付けられている場合は、加入義務があります。しかし、加入義務がある場合でも、貸主または仲介業者が勧める保険に加入する義務まではありませんので、勤務先の保険会社で加入することはできます。また、借主の家財に対する保険は、貸主とは無関係なものですので加入義務はありません。保険には、①家財道具の損失を保障することが主たる目的の保険、②家主に対して法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険、家主との契約に基づいて負担する小修理費用を一定限度で支払う保険、③他人の物に損害を与え法律上の賠償責任を負った場合に一定額の保険が支払われる保険など、各保険会社の保険の種類によって保険の内容は異なりますので、契約する保険の内容を必ず確認することが必要です。
なお、保険の期間が残っている場合、次のアパートで残存期間前の保険の適用が受けられる場合もあります。保険証書等書類は大事に保管しておきましょう。
計10室のアパートを、若いサラリーマンや学生相手に貸すことで生計を立てています。今年の2月中旬に、4月から会社に入社するので、空き部屋を借りたいが、それまでは他の人に貸さないで欲しいという申込みがありました。人のよさそうな人だったので信用して、1万円だけ預かって、部屋を空けておきました。その後、何回か、いつ頃入りますという連絡はあったのですが、4月になっても入居しないままでした。最近、近くの別のアパートの方に住んでいることがわかりました。4月を過ぎると、学生もサラリーマンも住まいは決まっていて、6月になった今も空きは埋まっていません。そのサラリーマンから損害賠償として、2か月分くらいの家賃は払ってもらいたいと思いますが、できるでしょうか。
契約の当事者は契約が成立するまではいつでも交渉をやめることができるのですが、一般に、契約交渉がある段階に達すると、交渉を一方的に打ち切ってはならない義務が発生するとされています。契約には至らなかったが、当事者の一方の言動から契約が締結されるものと信じた相手方に損害を与えた場合、信頼関係に基づく信義則上の責任として損害賠償責任を負うとの考え方があります(不法行為責任で構成されることもあります)。ご質問のケースの場合も広く解釈すると損害賠償請求も可能なようにも思えますが、しかし、入居の申込みを受けて物件を押さえておく場合は、期限を切るのが一般的です。何回か、「いつ頃には入居します。」との連絡があったとのことですが、どうしてそのときに契約の話をしなかったのでしょうか。「いついつまでに契約をしないのであればこの申込はなかったことにします」と告げ、早めに入居者募集を再開していればこのような事態にはならなかったと思われます。大家さんにも過失があるように思います。損害賠償の請求をしたいとお考えであれば、法律の専門家にご相談下さい。
賃貸借契約の連帯保証人になってほしいと頼まれましたが、賃貸借契約の連帯保証人の義務はどこまでなのでしょうか。
連帯保証人は賃借人の債務の履行を保証することになりますので、賃借人が賃貸人に債務の履行をしない場合に賃借人に代わってその債務を履行しなければならない義務を負います。賃借人の負っている債務は①賃料の支払、②賃貸借契約が終了した場合の原状回復費用の支払、③賃貸借契約が終了した場合の明渡し不履行の損害金の支払、④目的物(家・部屋)を損壊した場合の補修費用の支払等があります。
なお、「連帯保証」は普通の保証と違い、催告の抗弁権や検索の抗弁権はなく、債権者から請求があれば、直ちに弁済の責任を負うことになります。連帯保証人の義務を十分に確認したうえで保証契約を結んでください。
賃貸住宅に入居するので、連帯保証人を立てましたが、家賃保証にも加入するように言われ、保証会社に保証料を支払いました。不当ではないのでしょうか。
賃貸借契約において借主が家賃を滞納した場合など、その家賃の支払義務等借主の債務を連帯して負担するため、連帯保証人を立てることが行われています。ご質問ではさらに、保証会社との保証契約を要請されたとのことですが、そのこと自体が不当であるとは言えないと思います。最近ではなかなか連帯保証人を立てることが難しく、これに代えて保証契約を結ぶ例もあります。貸主としては重ねて家賃保証等を確実にしようとする手法かもしれませんが、もう一度保証契約の必要性について貸主や媒介業者とよく話し、保証会社にも説明を聞いて保証人との違いなどを再確認されてはいかがでしょうか。その上で金額も含め納得ができなければ、保証契約の解約も考えられます。ただし、その場合は賃貸借契約自体も不成立に終わることも予想されますのでよく話し合ってください。
息子がアパートを借りることになり、親である私が連帯保証人になるのですが、媒介(仲介)業者から「連帯保証人の印鑑証明と収入証明を出してほしい」と言われました。応じなければいけないものでしょうか。
大家さんや媒介業者としては、連帯保証人の本人確認や、万一家賃を滞納した場合などに支払能力があるかどうかを確認するために、このような要求をする場合もあります。原本を渡してしまうのは不安であるなら、「見せるだけにしてほしい」「原本確認後コピーをとり原本は返してほしい」のように交渉してみてはどうでしょうか。
これまでは勤めている会社が大家さんと契約してアパートを借り、そこに住んでいましたが、今度、会社を退職することとなり、私自身が借主となることになりました。この場合に、新規契約として新たに敷金や礼金を払えと言われましたが、そうしなければならないものでしょうか?
賃借人が変わり新たな賃貸借契約を締結することになりますので、新規の契約内容に基づいて、 敷金や礼金が発生することになると思われますが、大家さんと十分に話しあって金額等を決めてください。